振り込め詐欺の原点であり最初の特殊詐欺

昭和の闇金はオイコラ系でゴツイおっさんが色見本のようなスーツにエナメルの革靴で家や会社に乗り込んでいました。

それに比べて平成の闇金はインターネットと名簿屋を使い「電話」を最大限に活用するという表に出てこない手口に切り替わっていました。

 

それが顕著になってきた、2005年近辺の世情と闇金事情について書いていきます。

貸します詐欺とそれを支えた名簿屋

2005年よりも数年前、ある詐欺が登場して日本全国に被害者が続出しました。

皆さんもご存じだとは思いますが、

 

オレオレ詐欺

 

です。今は名前を変えて振込め詐欺」「母さん助けて詐欺」「訪問型詐欺になっております。

もし流行語大賞に犯罪用語部門が存在するならば大賞を取ってもおかしくないほど爆発的に被害者を生み出した詐欺でした。

 

この詐欺のターゲットは主に一人暮らしの老人なのですが、どうやって彼らは老人に電話をかけることができたのでしょうか?

彼らがお金持ちの老人を狙い打ち出来たのは、精度の高い顧客見込リストを入手していたからです。

例えば、株主リストや国債所有者リスト、先物取引者リストなどを名簿屋と呼ばれるリスト販売業者から購入し、かたっぱしから電話をかけていたのです。

 

一昔前にあった、先物取引の営業にちかいものがあります。業界でローラ―と呼ばれていたリストにある電話番号に片っ端から電話をかけまくるのと同じです。

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名簿屋なる商売は問題にならないのか?

当時はちょうど個人情報保護法が施行された年でもあったのですが、それ以前までは名簿屋も合法に商売ができてしまったのです。

2005年以降、本人の承諾を得ない個人情報の売買は刑事罰対象になっているので業者も大手を振って商売ができなり、今ではその言葉すらもあまり聞かなくなりました。

 

そして大半の名簿屋はスパム配信業者へと業態をシフトさせていたのです。

オレオレ詐欺
オレオレ詐欺に注意

画像引用:秋田県警察

名簿屋からスパム配信業者へ

平成初期の闇金を語る上で欠かせないのが名簿屋の存在です。

これ隠語でジミ屋という符丁で呼ばれたこともあります。法律に抵触するのでおおっぴらに

「名簿屋から昨日、2万件の顧客データ、それも初回出荷分手に入れたぜ」

などと言える時代は終わっていたからです。

当時、名簿屋の大口顧客は先物会社や証券会社でした。

 

しかし迷惑電話は社会問題化し顧客獲得方法が問題となり国から宣伝方法について厳しく指導された結果、派手な電話アタックが出来なくなりました。

 

大口顧客を失った名簿屋が目を付けたのが当時ネットに対して多額の広告予算を使っていた、出会い系サイト業者と闇金グループだったのです。

 

このころ名簿屋は新旧二分化し、昔ながらの名前、住所、電話番号、生年月日などがそろった名簿エクセルを販売する昔ながらの名簿屋と、メールアドレスと迷惑メールの配信業務をセットで販売する配信屋(スパム屋)などと呼ばれる新名簿屋にわかれてきた時代でもありました。

 

今では名簿リストのことをCSVと読んでいるようです

※csvとはエクセルの保存方式の1つですが、ある業界では迷惑メールを配信するときのネタの保存方法を暗喩してスパムメールをさす隠語となったのです。

他にも大量メール配信=大漁となぞらえて釣り」「大漁など呼ぶ場合があります。

一般的にはメール配信することから配信またはバラマキなどと呼ばれます。

 

出会い系サイトの迷惑メールやギャンブル、副業サイトの勧誘メールがスパムで送られてくるのは、配信屋(名簿屋)と出会い系業者、ギャンブル業者ががっちりタッグを組んでいるからです。

また近年世間を騒がせた、低年齢層向けの教育商材を販売していた超大手企業から顧客情報が流出した事件は名簿屋にデータを売るために行われたと確信しています。

 

話がそれてしまいましたがそのような世情の中で、闇金は社会問題化しており警察は知的犯罪である詐欺の取り締まりを厳しくしておりました。

こうした背景の中、新手の闇金手法が出てきたのです。

 

融資保証詐欺

保証金・預託金詐欺

総称:貸します詐欺

ゼンドリから融資保証詐欺に進化した特殊詐欺

今でも被害者を生み出している貸します詐欺(俗称:融資保証詐欺)の手口が出てきたのが2005年前後だったと思います。

当時、紹介屋はほぼ100%壊滅しており、ゼンドリと言われていた手口と商品買取業者が混在している時代でした。紹介屋についてはこちらでまとめてます。

金田 幸夫
金田 幸夫
金田です。
商品買取業者は後の

 クレジットカード現金化

というジャンルに枝分かれしますが、闇金とは根本的にビジネスモデルが異なるためこの場では割愛します。


闇金問題を扱ったサイトを見ていると、ゼンドリという言葉を紹介するサイトを見かけますが、これは専門的な用語になるためサイト管理者が本当にその言葉の意味を知っているのか疑問に思う時があります。

なぜなら一般的なキャッシング会社ではこの言葉を使わないのです。

 

ゼンドリとは全てを盗ってしまうからゼンドリ

 

紹介屋の手数料が100%なので全盗りなのです。

しかし、先に話したように紹介屋に対する取り締まりが厳しくなるにつれ、この手法自体も成り立たなくなってきました。

 

1つに紹介屋のビジネスモデルが間接的すぎて時代のニーズに合わなくなっていたのです。

簡単に紹介屋をまとめました。

◆紹介屋とは◆

・自分で用意したダミーの金融サイトで集客する

・申込をしてきた融資希望客に理由を付けてウチでは融資出来ないけども、近くの店の店長と懇意にしてるから、裏から口利きをすると営業トーク

・融資が受けられたのであれば口利き料として手数料を払ってもらう

※大抵が3割から5割が相場、4人で1カ月あたり2000万円近い売上を上げた業者なども存在

実際には「口利き」などしていません、多重債務者は自分のことを勝手にブラックだと思い込んでいる人も多かったため適当にキャッシング会社を紹介してもお金が借りられたのです。

 

ネットで調べた大手消費者金融や中堅どころの金融に行けと指示を出していただけなのです。

 

しかし、自分たちのところの売上になるまでに多くのハードルを超える必要があったため思うように儲けられなくなってきたのです。

時代はより分かりやすく直線的な流れを求めるように変わっていたのです。

さらに、追い打ちをかけるように、キャッシング会社が紹介業など闇金に対する危険告知を行っていたので、彼らの顧客も騙されなくなっていたのです。

 

そのような背景があり盗れるヤツから全部盗るというゼンドリが登場しました。

 

そしてその全盗りの手法がさらに発展し営業トークがマニュアル化されたのが融資保証詐欺です。

融資保証詐欺の手口

理論はとても簡単です。

お金を貸してあげたいけど信用がないから保証金(謝礼金)を払って上司を信用させてもらいたいとウソをついてお金を騙し取るの手口です。

 

具体的にはこんなやりとりがありました。

「そのまますぐに融資は出来ないが保証金を先払いしてもらえれば即日融資するので最初だけ辛抱して払ってもらいたい。払った保証金は利息から引いておくので何のリスクも無いです。」

 

とか、

 

「保証人が付けられないのであればこちらで用意する事ができるが、謝礼金を払わなければならいので先にそのお金を振り込んでもらいたい。上司には承諾を取ってるのであなたさえ頑張ってくれれば明日には融資できる。」

 

などと言って

 

先に闇金に金を振込ませる

 

そして、

 

トンズラ

 

この流れは現代闇金でも存在しており、最新とは言いませんが昔からある手口で現存しているものの1つであると言えるのです。

金田 幸夫
金田 幸夫
※2020年では先振りと言われていてツイッターの個人間融資アカウントを中心に猛威をふるっています。

ゼンドリと異なるのは大口融資、おまとめ融資など大きな金額を貸し付けるようなサイトを作って、希望融資額の10%を先払いさせるため、一回の被害金額の大きさが過去にないほど高額になることでした。

 

少ない人数で爆発的な売上が見込めると知った業者は、こぞってこの保証金詐欺の手口を真似し被害者が倍々に増えました。売上に比例して社会問題になるまでそれほど時間はかかりませんでした。

金田 幸夫
金田 幸夫
先のオレオレ詐欺と同じようなお金の流れをしていたため、警察が融資保証詐欺を貸します詐欺として振込め詐欺の分派に位置付けたことも問題の表面化に拍車をかけたと言えるでしょう。

当時、振込め詐欺は警察が摘発に力をいれていた犯罪であったため、捜査の目が厳しくなり、それまでよりも厳しい取り締まりのさらされることになったのです。

この後、一時ではありますが闇金業者は激減します。

私はこれは警察のたゆまぬ努力の成果だと思ってます。

 

しかし、また闇金が増え始めたのです。

そうなんです、またしても時代に合わせた新しい手口が登場したのです。

 

それについてはまた次回書きたいと思います。

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まとめ

闇金の歴史はすでにカテゴリーとしてまとめていたのですが「闇金業者だけの歴史がみたい」という問合せを頂きましたのでこちらで少しまとめました。

【歴史】昭和闇金の手口はウシジマくんとミナミの帝王

【紹介屋】過去から現在までの闇金の手口